【わかりやすく徹底解説】「カーボンニュートラルコンビナート」とは?(一企業ではなく地域経済の活性化へ)Part.2

カーボンニュートラル
ニュー太郎
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今回は「カーボンニュートラルコンビナート」に関する内容を

わかりやすく解説します。

その第2弾であり、実現に向けた技術・立場毎の役割なことを見ていきます。


 2050年カーボンニュートラルに向けて、一企業単独での検討だけでなく、関係する企業群として考えることが必要です。

企業群としてコンビナートでは、既に設備の共有化等で効率的な生産を行っています。

但し、コンビナートは温室効果ガスの大量消費拠点でもあります。

この既存のコンビナートの地域資産を有効活用しつつ、脱炭素社会への適応を行っていく必要があります。

産業の新陳代謝/新たな価値創造の姿勢で臨むことが重要であり、”選択”と”集中”というのはよく言われることではありますが、どこの、何に投資をする(コストをかけるか)の判断が必要です。

今回はそんなカーボンニュートラルコンビナートの実現に向けた技術・立場毎の役割を解説します。

まだまだこれから検討を進めていく部分が多いので、カーボンニュートラルコンビナートの動向をいち早く学ぶことは、今後伸びてくる企業(メーカー)を予測することに繋がります。

日本の戦略を含めて学んでいきましょう!


この記事を読むことで、

  • カーボンニュートラルコンビナートの全体像 がわかる
  • カーボンニュートラルコンビナートの実現に向けた技術 がわかる
  • カーボンニュートラルコンビナートの実現に向けた立場毎の役割 がわかる

カーボンニュートラルコンビナートの全体像

ニュー太郎
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前回記事でカーボンニュートラルコンビナートの背景と必要性・目指す姿・果たすべき役割を解説しました。

内容を簡単におさらいします。

コンビナートとは?
  • 設備の共有化等により効率的な生産を実施
  • 海運による搬入が便利な海沿いにある
  • 温室効果ガスの大量排出拠点である

  • コンビナートは温室効果ガス排出量が多いことがあり、そのことのみを理由にしてコンビナートの既存設備等をスクラップすることは社会的損失が大きく、既存のコンビナートの地域資産を有効活用しつつ、脱炭素社会への適応を行っていく必要があります
  • 産業の新陳代謝/新たな価値創造の姿勢で臨むことが重要となります。 ⇒ コストをどこにかけていくかという判断が必要になります。

カーボンニュートラルコンビナートが目指すこと
  • カーボンニュートラル社会の持続的な発展
  • 製造事業者等の競争力強化
  • 地域経済・日本経済の活性化

  • カーボンニュートラルコンビナートの役割は、カーボンニュートラル社会の持続的な発展・経済活性化に貢献する存在となることです。

カーボンニュートラルコンビナートの役割を果たす為にすること

①:脱炭素エネルギーの受入/生産/供給

②:炭素循環マテリアルの受入/生産/供給

③:脱炭素技術のテストベッド



カーボンニュートラルコンビナートの実現に向けた技術

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カーボンニュートラルコンビナートを実現に向けた技術メニューと産業ポテンシャルを見ていきましょう。

ポテンシャル
  1. 水素やアンモニアの共同調達・利活用
  2. CO2共同回収・利活用
  3. バイオマス原料の共同調達・利活用
  4. 廃棄プラスチックの共同調達・利活用
  5. 省エネルギー・省資源の取り組み強化
  6. CCSの共同実施
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各ポテンシャルの詳細を見ていきましょう。


水素やアンモニアの共同調達・利活用

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コンビナートとして水素(アンモニア)を調達・製造し、

既設設備・インフラを活用しながらコンビナート内で利活用します。

 カーボンニュートラル社会の実現にあたっては、エネルギーの脱炭素化(燃料としての活用)、マテリアルの炭素循環(原料としての活用)を行うために、大量の水素・アンモニアが必要になります。

 カーボンニュートラルコンビナートは、その集積効果を活かし、水素・アンモニアを大規模かつ安価に受け入れ、又は水電解による生成や副生水素を製造します。

 これらを利活用して様々な脱炭素エネルギーや炭素循環マテリアルの供給を行う拠点として、水素・アンモニアのサプライチェーンの一端を担うポテンシャルを有します。

 既存設備・インフラの活用やカーボンニュートラルポートとの連携等も視野に入れながら、コンビナート内で共同して水素やアンモニアの調達・利活用を行うための貯蔵タンクやパイプライン等を整備していく必要があります。

 水素は、比重が軽くタンクなどの設備が大きくなってしまうこと、水素脆性による配管の腐食が懸念されることから、専用の設備が必要となるため、一社当りの投資負担を削減するためにも、これらの共有設備が必要となります。

カーボンニュートラルポートとは?

 水素・燃料アンモニア等の大量・安定・安価な輸入・貯蔵等を可能とする受入環境の整備や、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化、集積する臨海部産業との連携等を形成したもの

カーボンニュートラルポート(CNP)検討会の結果及びCNP 形成計画作成マニュアル骨子をとりまとめました

国土交通省 港湾局産業港湾課

2021年4月2日

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001398501.pdf

CO2共同回収・利活用

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コンビナート内で発生したCO2を回収し、

合成メタン等を製造して再びコンビナート内で利活用します。

 合成メタンや合成燃料、炭素循環マテリアルの製造等にあたり必要となる炭素源を確保するため、コンビナート内で発生したCO2を一元的に管理し、最適配分していくことが求められます

 コンビナート内で共同してCO2を回収し利活用するためのCO2回収設備やパイプライン等の共同利用整備が必要となります。


第2回メタネーション推進官民協議会 日立造船メタネーションの取組

日立造船株式会社

2021年9月15日

https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/methanation_suishin/pdf/002_04_00.pdf

バイオマス原料の共同調達・利活用

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バイオマス原料の共同調達を行うサプライチェーンの構築、

共同での貯蔵スペース確保や集積が必要です。

 バイオマス発電やバイオ燃料製造を行うにあたり、原料となる植物や廃棄物等の確保が重要となります。

 発電や燃料合成に必要な原料確保やコスト削減のために、原料となる農林業由来の木材や、都市又は産業由来の廃棄物などの共同調達等といった、サプライチェーン構築が必要です。

 また、共同での貯蔵スペースの確保や集約が必要となります。


廃棄プラスチックの共同調達・利活用

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廃棄プラスチックもバイオマス原料と同様に、

共同調達を行うサプライチェーンの構築、

共同での貯蔵スペース確保や集積が必要です。

 ケミカルリサイクル等を行うにあたって、原料となる廃棄プラスチックの確保が重要となります。

 コンビナート内で共同して安定的な数量のプラスチック生産を行うため、大量の廃棄プラスチック回収が必要です。

 バイオマス原料と同様に、設備を集約し、廃棄プラスチックの共同調達・利活用を行うための貯蔵施設の共同利用が必要となります。


省エネルギー・省資源の取り組み強化

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コンビナート内で発生する蒸気、副生水素を活用し、

コンビナート内で連携して省エネルギーや省資源の取り組みを行う必要があります。

 個社単位での省エネルギー・省資源の取組には限界があります。

 カーボンニュートラルの実現にあたっては、脱炭素化への取組のみならず、着実な低炭素化への取組も必要になる為、個社単位ではなくコンビナート内で連携して省エネルギーや省資源の取組を行うことで、集積・連携による相乗効果が期待できます。

 省エネルギーの取組強化に際しては、排熱で生成した蒸気をコンビナート内各設備で活用するための蒸気搬送設備やヒートポンプ等の整備が必要です。

 省資源の取組強化に際しては、コンビナートにおいて、発生する副生水素を高効率で回収し、高純度化して利活用することが求められています

 その為に、大規模かつ省電力のPSA設備、及び回収した副生水素を集約して各用途に配送するためのタンクやパイプライン等の整備が必要です。

PSA設備とは?

 PSA;:Pressure Swing Adsorption

 圧力変動吸着法を用いた設備で、水素含有ガスなど改質ガスから純水素を精製する。

 水素含有ガスなど改質ガスから純水素を精製する設備。


CCSの共同実施

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既設の化学製品製造やCO2回収設備、インフラを最大限活用し、

追加で必要となるパイプライン、CO2貯蔵施設等については、

共同での設備投資や整備が必要となります。

 コンビナート内で処理しきれない CO2が発生し、それを回収して埋める CCS も必要となるケースがあります。

 海外では産業クラスターで CCS を進める動きがあり、国内コンビナートおいても、各社が連携して CCS を行うことが求められます。

 欧州のコンビナートが実施している CCS 設備を共有設備として活用する取組は日本にとっても有効と
考えられ、コンビナート内各社が協調して投資・活用する運用が求められます。

 なお、コンビナート内にて CCS を行うのみならず、場合によっては海外の CCS 活用のために CO2輸出を行うことも想定されます。

 CCS を実施するためには、尿素やメタノールなどの既設化学製品製造や、CCUS向けに用いられている CO2 回収設備やインフラを最大限活用し、追加で必要となるパイプライン、CO2貯蔵施設等については、共同での設備投資や整備が必要となります。


カーボンニュートラルコンビナートの実現に向けた立場毎の役割

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コンビナートの立地企業だけでなく、国・自治体・企業が

連携して取り組みことが重要です。

国に求められる役割

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国には、

 先を見据えて戦略的かつ計画的に全体最適化、

 企業の投資予見性の向上、

 費用補助、ファイナンス支援、

 企業へのインセンティブやビジネスモデルの確立支援

が求められます。

  • 先を見据えて戦略的かつ計画的に全体最適化を図り、カーボンニュートラルコンビナートの実現を後押ししていくこと
  • 脱炭素エネルギー・炭素循環マテリアルの供給・利活用拠点や脱炭素化技術のテストベッドの整備など、カーボンニュートラルに関する政府方針を明確にするなどして企業の投資予見性を高めること
  • 設備投資や技術実証等に対する費用補助、ファイナンス支援等を積極的に進めること
  • 脱炭素エネルギー・炭素循環マテリアルの需要と供給を喚起するため、脱炭素エネルギー・炭素循環マテリアルの調達や供給を担う企業へのインセンティブやビジネスモデルの確立支援等を検討すること

自治体に求められる役割

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自治体には、

 カーボンニュートラルコンビナートを実現するのか方向性の検討、

 地域内・地域間の連携、

 カーボンニュートラルコンビナートへの理解・啓蒙を促す、

 カーボンニュートラルに関する取組の連続性を確保する仕組みの構築、

 新たな産業集積を呼び込むための施策

が求められます。

  • 「脱炭素エネルギーの受入/生産/供給」「炭素循環マテリアルの受入/生産/供給」「脱炭素化技術のテストベッド」のいずれの機能に重点を置いたカーボンニュートラルコンビナートを実現するのか方向性を検討の上、地域内・地域間の連携を促進していくこと
  • 住民や地域社会に対して、カーボンニュートラルコンビナートへの理解・啓蒙を促すこと
  • 自治体が積極的に関与し、コンビナート及びその周辺に立地する企業等が参加する協議会等を設置すること
  • カーボンニュートラルに関する幅広い知見を蓄積し、それを共有・継承し、取組の連続性を確保するための仕組みを構築すること
  • カーボンニュートラルの実現を通じ、地域経済の活性化を図る上では、新たな産業集積を呼び込むための施策を検討すること

企業に求められる役割

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企業には、

 カーボンニュートラルを経営における中核テーマと位置づけた取組、

 産学連携への積極的な取組、

 カーボンニュートラルに関する幅広い知見の蓄積・共有・継承する仕組みの構築、

 人材育成

が求められます。

  • カーボンニュートラルを経営における中核テーマと位置づけて取組を進めること
  • 本社と事業所間の連携を強化し、本社と事業所が一体となって取組を進めていくこと
  • 資本の壁を越えた連携を積極的に行うことにより、個々の企業の設備投資を抑えて全体最適を図るとともに、エネルギー・マテリアルの共同利活用・調達による集積効果を出すこと
  • スタートアップの呼び込み、開発した技術のスケールアップ、イノベーションの推進等を行うために、産学連携に積極的に取り組むこと
  • 取組の連続性を確保するため、カーボンニュートラルに関する幅広い知見を蓄積し、それを共有・継承する仕組みを構築すること
  • カーボンニュートラルに関する必要な人材育成に積極的に取り組むこと

金融に求められる役割

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金融には、

 議論・協議会への積極的な参加、

 中長期目線でのファイナンス・リスクマネーを供給、

 事業性評価能力や調査能力を向上

が求められます。

  • コンビナートごとの特性を踏まえるとともに、トランジションも見据えながら、ビジネスモデル確立に向けた議論に積極的に参加すること
  • 地域において事業化や資金調達についての議論が行われるよう、企業・自治体等が参加する“地域協議会”等に積極的に参加すること
  • 既存施設の用途転換/カーボンニュートラル化や企業間の設備共同利用、事業転換支援のための、中長期目線でのファイナンス・リスクマネーを供給すること
  • 事業性評価能力や調査能力を向上させること

アカデミアに求められる役割

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アカデミアには、

 ノベーション創出に貢献、

 人材育成、

 企業間や産業間の連携等を促すような役割

が求められます。

  • 脱炭素化技術の実証やスケールアップ、産学連携等に積極的に関与し、コンビナートにおけるイノベーション創出に貢献すること
  • 必要な知見を蓄積すべく、人材育成に積極的に取り組むこと
  • 企業における本社・事業所間の連携、企業間の連携、さらには産業間の連携等を促すような役割を果たすこと

まとめ

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最後に、本記事のまとめです。

カーボンニュートラルコンビナートの実現に向けた技術

1.水素やアンモニアの共同調達・利活用

コンビナートとして水素(アンモニア)を調達・製造し、

既設設備・インフラを活用しながらコンビナート内で利活用します。

2.CO2共同回収・利活用

コンビナート内で発生したCO2を回収し、

合成メタン等を製造して再びコンビナート内で利活用します。

3.バイオマス原料の共同調達・利活用

バイオマス原料の共同調達を行うサプライチェーンの構築、

共同での貯蔵スペース確保や集積が必要です。

4.廃棄プラスチックの共同調達・利活用

廃棄プラスチックもバイオマス原料と同様に、

共同調達を行うサプライチェーンの構築、

共同での貯蔵スペース確保や集積が必要です。

5.省エネルギー・省資源の取り組み強化

コンビナート内で発生する蒸気、副生水素を活用し、

コンビナート内で連携して省エネルギーや省資源の取り組みを行う必要があります。

6.CCSの共同実施

既設の化学製品製造やCO2回収設備、インフラを最大限活用し、

追加で必要となるパイプライン、CO2貯蔵施設等については、

共同での設備投資や整備が必要となります。



カーボンニュートラルコンビナートの実現に向けた立場毎の役割

 先を見据えて戦略的かつ計画的に全体最適化、

 企業の投資予見性の向上、

 費用補助、ファイナンス支援、

 企業へのインセンティブやビジネスモデルの確立支援

自治体

 カーボンニュートラルコンビナートを実現するのか方向性の検討、

 地域内・地域間の連携、

 カーボンニュートラルコンビナートへの理解・啓蒙を促す、

 カーボンニュートラルに関する取組の連続性を確保する仕組みの構築、

 新たな産業集積を呼び込むための施策

企業

 カーボンニュートラルを経営における中核テーマと位置づけた取組、

 産学連携への積極的な取組、

 カーボンニュートラルに関する幅広い知見の蓄積・共有・継承する仕組みの構築、

 人材育成

金融

 議論・協議会への積極的な参加、

 中長期目線でのファイナンス・リスクマネーを供給、

 事業性評価能力や調査能力を向上

アカデミア

 ノベーション創出に貢献、

 人材育成、

 企業間や産業間の連携等を促すような役割


カーボンニュートラルコンビナートの実現に向けた 論点整理

2022年3月

カーボンニュートラルコンビナート研究会

https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_neutral_complex/pdf/20220324_2.pdf

カーボンニュートラルコンビナートの実現に向けた論点整理(概要)

2022年3月

カーボンニュートラルコンビナート研究会

https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_neutral_complex/pdf/20220324_1.pdf

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今後も企業連携の動向からは目が離せません!

ご覧いただき、ありがとうございました。

以上、ニュー太郎でした。



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