【わかりやすく徹底解説】「電力会社のカルテル」とは?(政府が進めた電力システム改革に違反!)Part.2

社会問題
ニュー太郎
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今回は「電力会社のカルテル問題」に関する内容を

わかりやすく解説します。

その第2弾であり、問題の背景を見ていきます。


 

関西電力、九州電力、中国電力、中部電力がカルテルを結んでいたという問題を知っていますか?

この問題により、史上最高額である1,000億円の課徴金が命じられています。

問題の背景には、電力システム改革の一つである”電力小売りの自由化”があります。

電力小売りの自由化が何かといったことから、各社のプレスリリース内容を解説します。

電力会社は燃料価格の高騰・円安により収益が厳しい状況ですが、この課徴金により、更に追い打ちをかける損失を計上する必要があります。

電力会社、及び電力システム改革の動向を確認し、史上最高額の課徴金によって、電力会社だけでなく日本がどのように動いていくかは、今後の日本企業の収益を予測することに繋がります。

電力会社がどのような今後の収益改善策を講じるかを学んでいきましょう!


この記事を読むことで、

  • 電力会社のカルテル問題概要[前回の記事] がわかる
  • 電力小売りの自由化 がわかる
  • 各電力会社の対応 がわかる

電力会社のカルテル問題概要 [前回の記事]

問題
  • 関西電力、九州電力、中国電力、中部電力がカルテルを結んでいた
  • カルテルが結ばれた背景にあるとみられるのが、電力小売りの自由化
  • 対象となったのは、大規模な工場やオフィスビル向けの「特別高圧」、中小規模の工場や事業所向けの「高圧」の電力
課徴金免除制度
  • 公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることを目的とした独占禁止法に違反した場合
    • 私的独占、カルテル及び一定の不公正な取引方法については、違反事業者に対して、課徴金が課される
  • 課徴金とは、カルテル・入札談合等の違反行為防止という行政目的を達成するため、行政庁が違反事業者等に対して課す金銭的不利益のこと
  • 課徴金に対して、事業者が自ら関与したカルテル・入札談合について、その違反内容を公正取引委員会に自主的に報告した場合、課徴金が減免される制度が課徴金免除制度
  • 課徴金減免制度は、2006年に導入されてから、22年3月までに適用は延べ401社に上る
今回の適用減免
  • 関西電力;違反内容を公正取引委員会に自主的に報告したことにより、全額免除
  • 九州電力;調査開始後に申請を行い、公正取引委員会に全面協力したことで、30%の減免が適用されていると見られている
  • 中国電力;調査開始後も申請しなかったことで、減免なし
  • 中部電力;調査開始後も申請しなかったことで、減免なし

今回の課徴金


電力小売りの自由化

ニュー太郎
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今回のカルテル問題の背景として

”電力小売りの自由化”があります。

その内容を解説します。

電力供給の仕組み

 電力は、 発電所 → 送電線 → 変電所 → 配電線 の経路をたどり、供給されています。

 電力の供給システムは、 (1)発電部門 、 (2)送配電部門 、 (3)小売部門 の大まかに3つの部門に分類されます。

(1)発電部門

水力、火力、原子力、太陽光、風力、地熱などの発電所を運営し、電気を作る部門です。

(2)送配電部門

発電所から消費者までつながる送電線・配電線などの送配電ネットワークを管理します。

物理的に電気を家庭に届けるのは、この部門の役割です。

また、ネットワーク全体で電力のバランス(周波数等)を調整し、停電を防ぎ、電気の安定供給を守る要となるのも、この部門です。

(2)送配電部門 の補足

 送配電網全体で電気の需要と供給のバランスをとる「需給管理」や、電柱や電線など送配電網の建設・保守業務については、スケールメリットの観点などから、一社が一元的に行うほうが効率的という状況があります。

 地域のすみずみまで張り巡らされた送配電網を一元的に管理することで、二重投資を防ぐこともできます。

 こうした背景から、送配電部門に関しては、発電部門や小売部門のように自由化で新規参入を促す方法ではなく、これまでのように、ひとつの事業者が地域独占的にサービスを提供する形態は残しつつも、さまざまな事業者が送配電網を公平に利用できるよう、中立性を高める改革が進められ、

 送配電網の中立性を確保する方法のひとつが、「法的分離」(送配電部門の分社化)であり、

 2020年4月より開始されています。

経済産業省 省エネルギー庁 2020年、送配電部門の分社化で電気がさらに変わる

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/denryokugaskaikaku/souhaidenbunshaka.html

(3)小売部門

消費者と直接やりとりをし、料金メニューの設定や、契約手続などのサービスを行います。

また、消費者が必要とするだけの電力を発電部門から調達するのも、この部門の役割です。

電力小売全面自由化により、 (3)小売部門 において、新たに事業者が自由に参入できるようになっています

経済産業省 省エネルギー庁 電力供給の仕組み

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/supply/

電力小売りの自由化とは

 以前は、家庭や商店向けの電気は、各地域の電力会社(東京電力、関西電力等)だけが販売しており、家庭や商店では、電気をどの会社から買うか選ぶことはできませんでした。

 そこから、電気の小売業への参入が全面自由化され、家庭や商店も含む全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました。

 それにより、ライフスタイルや価値観に合わせ、電気の売り手やサービスを自由に選べるようになっています。


電力小売りの自由化の歴史

 2000年3月;「特別高圧」区分の大規模工場やデパート、オフィスビルが電力会社を自由に選ぶことができるようになり、新規参入した電力会社「新電力」からも電気を購入することが可能になりました。

 2004年4月・ 2005年4月;「高圧」区分の中小規模工場や中小ビルに拡大

 2016年4月1日;「低圧」区分の家庭や商店などに拡大

 これにより、全面自由化となりました。

経済産業省 省エネルギー庁 電力の小売全面自由化って何?

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/what/

販売電⼒量の推移

 2022年8月実績として、各地域の電力会社(東京電力、関西電力等)などではなく、電力の小売りの自由化により参入した新電⼒の販売電⼒量は154.4億 kWhでした。

(内訳:特別⾼圧15.7億 kWh、⾼圧61.8億 kWh、低圧76.9億 kWh)

 新電力が販売電⼒量全体に占める割合は20.0%となっています。

特別⾼圧に占める割合︓8.0%、⾼圧に占める割合︓22.5%であり全体の16.4%、低圧に占める割合︓27.4%)。


 また、新電⼒のうち、需要実績のある事業者数は537者です。

 (特別⾼圧︓117者、⾼圧︓418者、低圧︓467者)

経済産業省 省エネルギー庁 2022年度 統計表一覧

https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/electric_power/ep002/results.html
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電力小売りの自由化による新電力は特別高圧高圧で全体の16.4%となっており、

今回カルテルの問題となった電力会社は残る以外の部分を

競い合わないようにしたということです。


各電力会社の対応

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この問題への各電力会社の対応を見ていきます。

以下は、プレスリリース文そのままです。

関西電力

 プレスリリースなし


九州電力

 当社及び九電みらいエナジー株式会社は、2021年7月13日に特別高圧電力及び高圧電力の供給に関して、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)」違反の疑いがあるとして、公正取引委員会の立入検査を受け、以降、同委員会の調査に対し全面的に協力してまいりました。

 本日、当社は同委員会から独占禁止法に基づく排除措置命令書(案)及び課徴金納付命令書(案)に関する意見聴取通知書を受領いたしました。また、九電みらいエナジー株式会社は排除措置命令書(案)に関する意見聴取通知書を受領いたしました。

 当社といたしましては、同委員会から意見聴取通知書を受領しましたことを厳粛に受け止めるとともに、意見聴取通知書の内容を精査・確認し、同委員会から証拠等に関する説明を受けたうえで、今後の対応を検討してまいります。

 お客さまをはじめ関係者の皆さまには、多大なご心配とご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。

 なお、業績に与える影響につきましては、精査のうえ、見通しがつき次第速やかに開示いたします。

九州電力株式会社 プレスリリース 2022年12月1日

https://www.kyuden.co.jp/press_h221201-1.html

中国電力

 当社は、特別高圧電力および高圧電力の供給に関し、独占禁止法違反の疑いがあるとして、2021年4月13日および同年7月13日に公正取引委員会の立入検査を受け、以降、同委員会による調査に全面的に協力してきました。

 本日、同委員会から独占禁止法に基づく排除措置命令書(案)および課徴金納付命令書(案)に係る意見聴取通知書を受領しましたので、お知らせします。

 今後の対応については、意見聴取通知書の内容を精査・確認し、同委員会からの証拠等に関する説明を受けたうえで、慎重に検討します。

 お客さまをはじめ関係者の皆さまに多大なるご心配をおかけし、深くお詫び申しあげます。

 なお、業績に与える影響については現在精査中であり、今後、業績予想の修正が必要となった場合は速やかにお知らせします。

中国電力株式会社 プレスリリース 2022年12月1日

https://www.energia.co.jp/press/2022/14436.html

中部電力

 中部電力株式会社(代表取締役社長:林 欣吾、以下「中部電力」)および中部電力ミライズ株式会社(代表取締役:大谷 真哉、以下「中部電力ミライズ」)は、2021年4月13日に、中部地区等における特別高圧電力および高圧電力の供給に関して、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いがあるとして、公正取引委員会の立入検査を受け、以降、同委員会による調査に全面的に協力してまいりました。

 本日、中部電力は、同委員会から独占禁止法に基づく課徴金納付命令書(案)に関する意見聴取通知書を、中部電力ミライズは、同委員会から独占禁止法に基づく排除措置命令書(案)および課徴金納付命令書(案)に関する意見聴取通知書(以下あわせて「本通知書」)をそれぞれ受領いたしました。

 本通知書の内容を精査するとともに、同委員会より予定される命令の内容等に関する説明を受け、今後の対応を慎重に検討してまいります。

 また、課徴金納付命令書(案)を受領したことを受け、企業会計の基準に則り、2023年3月期第3四半期連結会計期間において、独占禁止法関連損失引当金繰入額として27,555百万円を特別損失に計上する予定です。

 お客さまや株主、地域の皆さま、お取引先をはじめ関係者の皆さまに、ご心配をおかけしておりますことを、お詫び申しあげます。

中部電力株式会社 プレスリリース 2022年12月1日

https://www.chuden.co.jp/publicity/press/1209752_3273.html

まとめ

ニュー太郎
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最後に、本記事のまとめです。

問題
  • 関西電力、九州電力、中国電力、中部電力がカルテルを結んでいた
  • カルテルが結ばれた背景にあるとみられるのが、電力小売りの自由化
  • 対象となったのは、大規模な工場やオフィスビル向けの「特別高圧」、中小規模の工場や事業所向けの「高圧」の電力
電力小売りの自由化
  • 電力の供給システムは、 (1)発電部門 、 (2)送配電部門 、 (3)小売部門 の大まかに3つの部門に分類
  • 2016年4月1日から電力小売全面自由化により、 (3)小売部門 において、新たに事業者が自由に参入可能
  • 家庭や商店も含む全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択可能
  • 電力小売りの自由化による新電力の特別高圧・高圧で全体の16.4%となっており、今回カルテルの問題となった電力会社は残る以外の部分を競い合わないようにしたということ
各電力会社の対応
  • 九州電力、中国電力、中部電力が2022年12月1日にプレスリリース
    • 内容は3社ともほぼ同様
    • 2021年7月13日に特別高圧電力及び高圧電力の供給に関して、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)」違反の疑いがあるとして、公正取引委員会の立入検査を受けた
    • 同委員会の調査に対し全面的に協力
  •  関西電力はプレスリリースなし
ニュー太郎
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今回の電力会社のカルテルは、

政府が進めてきた”電力自由化・電力システム改革”の過程で起きた事案であり、

大きな話題となっています。


ニュー太郎
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公正かつ自由な競争を行わなければいけません。

電力会社、及び電力システム改革の動向からは目が離せません!

ご覧いただき、ありがとうございました。

以上、ニュー太郎でした。



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