今回はカーボンニュートラルに向けて、燃料転換として注目度が高まっているアンモニアについて解説していきます。
アンモニアとは?
まずはアンモニアの物性を見ていきます。
分子式は「NH3」で、水素(H)と窒素(N)で構成
常温常圧では無色透明の気体
特有の強い刺激臭あり
毒性があるために「劇物」に指定
アンモニアは、毒性があります。
この辺の影響は、注意点のところで述べていきます。
アンモニアってよく聞くけど、何に使われているの?
現状は世界全体でのアンモニアの用途は、その約8割が肥料として消費されています。
残りの2割は工業用で、メラミン樹脂や合成繊維のナイロンなどの原料となります。
また、火力発電所が排出する大気汚染物質「窒素酸化物(NOx)」の対策にも利用されています。
NOxにアンモニアを結びつけることで化学反応を起こし、窒素(N2)と水(H2O)に還元する「還元剤」として利用するのです。
アンモニア製造方法
次に、アンモニアの製造方法を確認します。
世界全体のアンモニア生産量は、2019年で約2億トンあるのですが、そのほとんどがハーバー・ボッシュ法(HB法)で作られています。
約1世紀前に生まれた製法で、窒素と水素を、高温(400~650度)、高圧(200~400気圧)で酸化鉄触媒とともに反応させます。
この図で注目してほしいのが、左側の水素の製造方法です。
化石燃料(天然ガス)を使用して水素を製造する場合には、二酸化炭素(CO2)を排出します。
それではカーボンニュートラルに向けて全く意味を成しません。
そのため、アンモニアといっても水素の製造方法が非常に重要だということです。
水素の製造方法について、こちらの記事で解説しています。
アンモニアの今後の可能性
カーボンニュートラルを実現するために水素を使えばいいのでは?
なぜわざわざアンモニアにするの?
先ほど、水素を製造してからアンモニアを製造していることを説明しました。
結論から言ってしますと、アンモニアは水素キャリアとして優越性があるためです。
水素は体積当たりのエネルギー密度が低く(天然ガスの 1/3 程度)、これをどのような手段で輸送・貯蔵するかが課題となっています。
こちらは、電力中央研究所殿の報告資料です。
アンモニア部分を抜粋すると、
・輸送効率が最も優れている
・水素エネルギー利用割合が高い
・既設インフラ技術利用が可能
といった優れた点があります。
このようにアンモニアには優れた点が多く、これまでの肥料としての利用用途から、燃焼用燃料(専焼・混焼)としての注目が高まっています。
アンモニアには既存技術を利用して製造可能などといった優れた点が多く、燃焼用燃料として注目が高まっています。
アンモニア活用の注意点
アンモニアの優れた点は分かったけど、注意点はないの?
アンモニアの注意点を説明します。
・銅、アルミニウムに対する腐食性あり
・シールに用いるゴム材にも適用しないものがある
・取り扱うために資格者;毒物劇物取扱責任者、高圧ガス取扱責任者(圧力による)が必要
・取扱い時には、空気呼吸器、防毒マスク、保護衣・手袋などが必要
アンモニアは空気より軽く漏洩時でも適切な処置によりガス中毒や火災を防止できるといった取扱いの容易性もあります。
劇物であるという注意点はありますが、アンモニアは十分に利用可能性が高いと考えています。
環境省 省エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ammonia_01.html
中央電力研究所 海外水素調達時の水素キャリア候補の比較
https://criepi.denken.or.jp/hokokusho/pb/reportDownload?reportNoUkCode=Q18005&tenpuTypeCode=30&seqNo=1&reportId=8886
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