「燃料アンモニアサプライチェーンの構築プロジェクト」実施体制が決まったと聞いたよ。
2022年1月7日に実施体制の決定が発表されています。
こちらの企業・大学が実施予定です。
企業 | 千代田化工建設株式会社 株式会社JERA 東京電力ホールディングス株式会社 出光興産株式会社 株式会社IHI 三菱重工業株式会社 |
大学 | 東京大学 東京工業大学 大阪大学 九州大学 東北大学 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
今回はそのプロジェクトを見ていきましょう!
この記事を読むことで、
✓ 「燃料アンモニアサプライチェーンの構築」プロジェクトの全体像がわかる
✓ アンモニア需要の取り組みと課題がわかる
✓ アンモニア供給の取り組みがわかる
「燃料アンモニアサプライチェーンの構築」プロジェクトの全体像
グリーンイノベーション基金事業
このプロジェクトは、グリーンイノベーション基金事業として実施されます。
グリーンイノベーション基金については、過去の記事で解説しています。
グリーンイノベーション基金事業とは、「2050年カーボンニュートラル」を達成するため、企業等に対して、10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援するというものです。
このプロジェクトは、18つの中の1つです。
事業概要
まずは実施内容を解説します。
需要と供給のそれぞれで技術的な課題を解決するための研究開発を行うというものです。
需要があっても供給できなければ成立しませんし、供給ができても需要がなければ成立しません。
そのため、需要と供給の両方向から研究開発が行われます。
それでは、もう少し具体出来な課題を見ていきましょう。
アンモニアの需要
このプロジェクトでは、アンモニアの発電利用についての研究開発が行われます。
[1]石炭ボイラにおけるアンモニア高混焼技術(専焼技術含む)
【目標】
石炭火力発電の実機における50%以上のアンモニア混焼技術の確立を目指す。
【概要】
2050年カーボンニュートラルの実現のため、石炭火力発電設備のアンモニア専焼化への段階的移行に必要な技術を開発し、5万kW規模以上の実機での実証を行う。
【評価方法】
5万kW級以上の実機での実証を通じて、アンモニアを石炭ボイラで50%以上混焼した上で、実用化可能な水準で技術課題(安定燃焼、NOx低減等)が解決されていることを確認する。
【実施スケジュール】
2021年度から2029年度までの最大9年間。
3年程度のバーナー等の技術開発の後に2024年度を目途に実機実証へ移行。
【予算額】
上限337億円
【実施先】
[2]ガスタービンにおけるアンモニア専焼技術
【目標】
ガスタービンの実機におけるアンモニア混焼技術の確立を目指す。
【概要】
ガスタービン向け専焼バーナーを開発した上で、2000kW規模以上の実機での専焼の実証
を行い、吹き込み位置や流速等を最適化し、アンモニア燃焼技術を確立する。
【評価方法】
2000kW級以上の実機での実証を通じて、アンモニアをガスタービンで専焼した上で、実用化可能な水準で技術課題(安定燃焼、NOx低減等)が解決されていることを確認する。
【実施スケジュール】
([1]と同様)2021年度から2029年度までの最大9年間。
3年程度の適地調査や設備設計等を行った後に2024年度を目的に本格的な実証に着手。
【予算額】
上限119億円
【実施先】
このプロジェクトでは、アンモニアの発電利用について研究開発が行われます。
技術的な課題としては、安定燃焼、NOx低減等があります。
【補足】
・アンモニアは燃焼速度が遅いということから安定燃焼を実現するバーナー等の研究開発が必要
・アンモニア(NH3)は燃料に窒素分が含まれているので、燃焼により燃料由来の窒素酸化物(NOx)が形成されることから燃焼方法の研究開発が必要
アンモニアの供給
このプロジェクトでは、アンモニア供給コストの低減についての研究開発が行われます。
[1]アンモニア製造新触媒
【目標】
同一の熱改質を用いた際に、原料ガス(水素+窒素)からアンモニアを合成するプロセス全体の設備費用を増やすことなくアンモニア製造の運転コスト(人件費除く)を15%以上低減する合成技術の確立を目指す。
【概要】
十分な耐久性・安定性を前提として、低温・低圧で合成が可能な触媒の開発を適切なステージゲートの下で実施することで、既存のハーバー・ブッシュ(HB)法に劣らない効率での製造を実現
ハーバー・ブッシュ(HB)法について
海外ライセンサーに依存しない生産体制を構築するとともに、開発した触媒の価格低減に取り組むことで製造コスト全体の低減、製造時のCO2排出量の低減を目指す。
【評価方法】
小規模プラントでのアンモニア製造を実施の上、投入熱量・電力・触媒コスト等を基に運転日を測定する。
【実施スケジュール】
2021年度から2030年度までの最大10年間。
技術開発課題が多く極めて困難な取組であるところ、技術開発に3~4年程度の十分な時間を費やしたうえで2024年度以降に実証に移行。
パイロット試験までを見据えているところ、2026年度までのベンチ実証、その後のパイロット実証。
【予算額】
上限206億円
【実施先】
[2]グリーンアンモニア電解合成
【目標】
1年間の連続運転により最大製造可能量の9割以上の製造を可能とするグリーンアンモニア電解合成技術の確立を目指す。
【概要】
水を電気分解して水素を製造(水電解)し、その後HB法でアンモニア製造を実施する従来の製造方法を大幅に簡略化する非連続な技術として、水から直接アンモニアを製造する電解合成技術を開発する。
【評価方法】
商用段階の一般的な運転方法を想定し、試験設備を用いて電解合成技術による連続運転を1年間程度実施し、最大製造可能量の9割以上の製造がなされることをもって、安定的なアンモニア製造の技術が成立していることを確認する。
【実施スケジュール】
([1]と同様) 2021年度から2030年度までの最大10年間。
([1]と同様) 技術開発課題が多く極めて困難な取組であるところ、技術開発に3~4年程度の十分な時間を費やしたうえで2024年度以降に実証に移行。
技術的課題の詳細を見通すことが困難であるため、2024年度までにプロセス構築を実施し、その後に小規模実証を行う。
【予算額】
上限26億円
【実施先】
このプロジェクトでは、アンモニア供給コストの低減について研究開発が行われます。
[1]は既存技術の改善、[2]は新技術の開発です。
グリーンアンモニア製造技術は注目していきたいです。
まとめ
全体の想定スケジュールはこちらです。
✓ グリーンイノベーション基金事業として「燃料アンモニアサプライチェーンの構築」プロジェクトの実施先が決定(総予算額上限688億円)
2024年度から実機実証やベンチ試験等を行い、2030年までに技術確立を目指す
✓ アンモニア需要として、アンモニアの発電利用における高混焼化・専焼化の研究開発に取り組む
課題は、安定燃焼とNOx低減対策等
✓ アンモニア供給として、アンモニア供給コストの低減(既存技術の改善、新技術)の研究開発に取り組む
カーボンニュートラルに向けてグリーンアンモニアを用いることは非常に重要です。
その点から、水から直接アンモニアを製造する電解合成技術の開発は今後もう少し深堀したいと思います。
ちなみにですが、「工業炉における燃料アンモニアの燃焼技術開発」も取り組まれています。
「グリーンイノベーション基金事業/燃料アンモニアサプライチェーンの構築プロジェクト」に係る公募について
https://www.nedo.go.jp/koubo/EV2_100238.html
「グリーンイノベーション基金事業/燃料アンモニアサプライチェーンの構築プロジェクト」に係る実施体制の決定について
https://www.nedo.go.jp/koubo/EV3_100238.html
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