
今回は「COP27」に関する内容を
わかりやすく解説します。
その第1弾であり、基本的な内容を見ていきます。
各国の取り組みとして、世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ2度未満に保つとともに、1.5度に抑える努力をすることを決めています。
また、各国は5年ごとに削減目標を国連に提出し、取り組みの状況を報告することが義務づけられています。
こうしたことから、日本は2050年カーボンニュートラルを実現するという目標を公表して、その取り組みを進めています。
今年も気候変動枠組条約締約国会議であるCOP27が開催され、議論が行われました。
この会議には多くの国が参加・代表者が講演をする為、世界的な動向や今後の方針を知る上で非常に重要です。
今回はこのCOP27について、概要と今年の気候変動被害、脱炭素の動きを解説します。
世界の動向を確認し、日本がどのように動いていくかは、今後伸びてくる企業(メーカー)を予測することに繋がります。
日本の戦略を含めて学んでいきましょう!
この記事を読むことで、
- COP27の全体像 がわかる
- 世界の気候変動被害 がわかる
- 脱炭素の動き がわかる
COP27とは?

まずは、COPとは何か、これまでの主な内容、
今回のCOP27開催地を見ていきましょう。
「COP」とは「Conference of the Parties(締約国会議)」の略です。
ここでは、気候変動枠組条約締約国会議のことを指します。
第1回(COP1)は1995年3月28日~4月7日、ベルリン(ドイツ)にて開催されました。
そこから新型コロナウイルスの影響で延期された2020年を除き毎年開催されており、COP27は第27回目の開催ということです。
これまでの主な内容を見ていきましょう。

1997年に京都で開催されたCOP3で 「京都議定書」 に合意されました。
先進国の拘束力のある削減目標(2008年~2012年の5年間で1990年に比べて日本-6%、米国-7%、EU-8%等)を明確に規定しました。
京都議定書により、世界全体での温室効果ガス排出削減の大きな一歩を踏み出しました。
2015年にフランス・パリで開催されたCOP21で「パリ協定」が採択されました。
パリ協定には、
①世界共通の長期目標として2℃目標の設定や、すべての国による削減目標の5年ごとの提出・更新
②先進国が引き続き資金を提供すること
③JCMを含む市場メカニズムの活用
等が位置づけられています。
JCMとは、Joint Crediting Mechanism( 二国間クレジット制度 )の略です。
途上国への優れた低炭素技術等の普及を通じて実現した温室効果ガス排出削減・吸収を定量的に評価し、提供した国の削減量に加える制度。
COP27は、東京から約9,500km離れたエジプト東部のシャルムエルシェイクで、
11月6日から18日までの日程で開催されました。


昨年のCOP26についてはこちらです。
世界の気候変動被害

COP27で議論となる
今年の気候変動による被害を見ていきましょう。
パキスタンでの大規模な洪水
2022年6月以降、モンスーンがもたらした例年の10倍以上もの降雨により、
パキスタンで大洪水が発生しました。
この数十年で最悪とされる洪水がパキスタンを危機的状況に追い込み、
9月2日時点で子どもを含む1,200人以上の死者が報告され、3,300万人以上が被災、50万人以上が救援キャンプで生活していると推測されています。
被災地への道路が寸断され、全容はつかめておらず、被害状況はさらに深刻であることも懸念されています。
全国で洪水、鉄砲水、地滑りなどが起こり、100万棟以上の家屋が損壊し、70万頭以上の家畜が失われ、更に3,000km以上の道路と約150の橋が被害を受けるなど、インフラにも大きな影響を与えています。

日本赤十字社 【速報】パキスタン洪水:国土の3分の1が水没・日本赤十字社は海外救援金の募集を開始
https://www.jrc.or.jp/international/news/2022/0906_028257.html
ヨーロッパの干ばつ
2022年の夏、ヨーロッパでは干ばつと熱波が各国に大きな打撃を与えています。
the Global Drought Observatoryの最新報告によると、
ヨーロッパの47%が何らかの干ばつ警報を受けており、過去500年で最悪の事態となる可能性が高いといわれています。
(下図で、赤がAlert;警戒、オレンジがWarning;警報)
更に、17%で農作物などに影響が出ているとする報告書を発表し、平年より暖かく乾燥した気候は11月まで続くと警告しました。

JTB総合研究所 500年に一度の大干ばつ
https://www.tourism.jp/tourism-database/figures/2022/10/the-worst-drought-in-500-years/
中国の干ばつ
中国気象局によると、中国は7月以降、1961年の観測開始以来最も強い熱波に襲われました。
主に、中国南部で連日、高温が続いたうえ、降雨量も少ない日が続きました。
中国気象局は8月18日に、長江流域に中度以上の干ばつ警報を発令しました。
JETRO 長江中下流域の干ばつ、9月まで続く見通し
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/08/1dc213ffedcfcdb1.html
アフリカの干ばつ
北アフリカのモロッコでは頻繁に発生する干ばつで水不足から人が暮らせなくなる集落が相次いでいます。
今年は過去30年で最も深刻な干ばつに見舞われ、アルジェリアとの国境に近い東部の町リサニ近郊では、畑が広範囲で干上がり、作付けができない状態となっていました。
この地域では、数年前から雨の量が大幅に減り、農業や暮らしに必要な水が確保できないために人が住めなくなる集落が相次いでいるということです。
地元の行政当局者によりますと、周辺にあるおよそ360ある集落のうち、40の集落ではすでに全員が移住したほか、残る300余りの集落でも、人口が半減しているということです。


NHK COP27首脳級会合 深刻化する異常気象 石炭回帰の動きも
https://www3.nhk.or.jp/news/special/energy/focus/focus_006.html
脱炭素の動き

これまでの脱炭素の動きから
どのように変化したかを見ていきましょう。
世界の動き
ウクライナ危機が世界の脱炭素に与える影響について、
「ヨーロッパのように、ロシアからの天然ガスが入ってこない、エネルギーの供給不安という直接的な影響と、景気後退や企業の業績悪化に伴って脱炭素に向けた投資の優先度が低下するという間接的な影響が生じている。そうした影響を踏まえると、ウクライナ危機は脱炭素に対してさまざまな面で逆風となっている」
と日本総合研究所金融リサーチセンターの大嶋秀雄主任研究員は指摘しています。
異常気象が相次ぐ中、これまで世界の脱炭素の動きをけん引してきたEU=ヨーロッパ連合では、ロシアからの天然ガスの供給が大幅に減っていることを背景に、石炭への回帰が進む事態となってます。
ドイツやフランス、オランダなどでは電力の安定供給のためとして石炭火力発電所の稼働が拡大していて、IEA=国際エネルギー機関はことしのEUの石炭の消費量は前の年よりも7%増えるという見通しを示しています。
ギリシャのミツォタキス首相は2019年、稼働中の石炭火力発電所を2023年までに閉鎖する計画を発表しましたが、ことし4月、「この先2年、石炭の採掘を50%増加させ、石炭による発電量を増やすのが適切だ」と述べ、ロシア産の天然ガスへの依存を減らすためとして石炭の利用を拡大すると発表しました。
しかし、環境NGOからはこうした石炭への回帰に懸念の声があがっています。
グリーンピースのベルギー支部の広報担当者は「温室効果ガスは今、減らさなければならない。たとえ短期的であっても、石炭に後戻りするのはよくない兆候だ」と話しています。

NHK COP27首脳級会合 深刻化する異常気象 石炭回帰の動きも
https://www3.nhk.or.jp/news/special/energy/focus/focus_006.html
日本の動き
日本はヨーロッパに比べてロシアへのエネルギー依存度が高くないため、直接的な影響は見えにくい一方で
「企業の業績が悪化すると脱炭素を進めるために必要な設備投資や技術開発を進める余力や優先度が低下し、取り組みが遅れるおそれがある。国内ではこの先も脱炭素のトレンドは変わらないと思うが、足元の経済状況が悪化すると、その歩みのスピードは進みづらくなる。2030年目標までは残り8年しかないがこの1、2年の取り組みの遅れが深刻な影響として出てくるのではないか」
と日本総合研究所金融リサーチセンターの大嶋秀雄主任研究員は懸念しています。
日本では国内に供給される電力のうち、火力発電が占める割合は直近のことし6月で、全体の79.3%を占めています。
内訳は▽LNG=液化天然ガスが40.4%、▽石炭が29.8%、▽石油が2.3%などとなっています。
国のエネルギー基本計画では、2030年度に向けて「できる限り電源構成に占める火力発電の比率を引き下げる」としていますが、電力需給のひっ迫が懸念される中、政府はこの冬も、休止中の火力発電所の再稼働を求めるなど、火力発電に依存する状況が続いています。
こうしたなか企業の間では、災害や停電などの非常時の備えとして、石油やガスを使う発電機を導入する動きが出ています。
当初は環境に配慮し、温室効果ガスを出さない燃料電池の導入を検討したということですが
電池の容量が少なく、コストもかかるため、軽油を使うディーゼル発電機に変更したということです。
エネルギー価格の高騰による電気料金値上げの影響を受けて、経営の安定が最優先となり脱炭素に向けた取り組みを中断せざるを得なくなった中小企業も出ています。
中小企業の脱炭素を進める国の支援事業に参加して再生可能エネルギーを導入した場合の温室効果ガスの排出量を試算し、年内には太陽光パネルを設置して工場で使う電力をまかなおうと、場所を確保するなどの準備を進めていました。
しかし、ことし2月のロシアによるウクライナ侵攻後、電気料金の値上がりが続き、ことし9月に工場の稼働にかかった電気料金は104万円余りで、2021年の60万円余りと比べて1.7倍に値上がりしました。
工場を安定的に稼働させることが最優先で、太陽光パネルの設置や改修工事にかかる1000万円程度の費用を捻出することが難しくなり、導入をいったん中止せざるを得ない状況となっています。

NHK COP27首脳級会合 深刻化する異常気象 石炭回帰の動きも
https://www3.nhk.or.jp/news/special/energy/focus/focus_006.html
まとめ

最後に、本記事のまとめです。
- 「COP」とは「Conference of the Parties(締約国会議)」の略であり、気候変動枠組条約締約国会議のこと
- 毎年開催されており、COP27は第27回目の開催
- 代表的なものに、1997年に京都で開催されたCOP3で 「京都議定書」 、2015年にフランス・パリで開催されたCOP21で「パリ協定」がある
- COP27は、エジプト東部のシャルムエルシェイクで11月6日から18日までの日程で開催
- パキスタンでの大規模な洪水(数十年で最悪)
- ヨーロッパの干ばつ(過去500年で最悪)
- 中国の干ばつ(1961年の観測開始以来最も強い熱波)
- アフリカの干ばつ(過去30年で最も深刻)
- ヨーロッパ;エネルギーの供給不安という直接的な影響と、景気後退や企業の業績悪化に伴って脱炭素に向けた投資の優先度が低下から、石炭への回帰が進む
- 日本;企業の業績が悪化すると脱炭素を進めるために必要な設備投資や技術開発を進める余力や優先度が低下し、取り組みが遅れる

気候変動による被害は深刻です。
今後も世界の気候変動対策からは目が離せません!
ご覧いただき、ありがとうございました。
以上、ニュー太郎でした。
コメント