今回は石炭火力発電がどのように変わろうとしているのかを
わかりやすく解説します。
石炭火力発電のフェードアウト(徐々に少なくしていくという意味です)が計画されているのは知っていますか?
既に政府から方針が示されており、
各電力会社は、原子力発電、再生可能エネルギー発電(再エネ発電)、火力発電のあり方を経営ビジョンとして公表しています。
火力発電の中でもCO2排出量の多い石炭火力発電については、高効率化や燃料転換(LNG、水素・アンモニアなど)が考えられています。
この動向を学ぶことは、今後の日本の電源構成を知り、今後の伸びていく(力を入れる)企業を知ることに役立ちます。
企業の技術者として日々業務を行っている私がわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、
✓ 石炭火力発電の政府の方針 がわかる
✓ 各電力会社の石炭火力発電に対する取り組み計画 がわかる
石炭火力発電のフェードアウト
まずは、石炭火力発電の政府の方針から見ていきましょう。
2030年度の電源構成
日本の電源構成における石炭火力発電の比率は2019年度で32%です。
2030年度の石炭火力発電の比率は、19%を目指すことになっています。
現状から▽13%低減を行うという目標です。
再エネなど電力の安定供給についての取り組みは、別記事で解説しています。
2021年10月~11月にイギリスのグラスゴーで開催されたCOP26(気候変動枠組条約締約国会議)にて、
「排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の逓減及び非効率な化石燃料補助金からのフェーズ・アウトを含む取組を加速」
ということが各国からも宣言されています。
COP26の詳細内容は、別記事で解説しています。
石炭火力のフェードアウト
石炭火力発電の種類
石炭火力発電で主に利用されているのは蒸気タービンのみで発電する方式で、この蒸気の温度や圧力を上げることで、発電効率が上がります。
「亜臨界圧(SUB-C)」→「超臨界圧(SC)」→「超々臨界圧(USC)」と効率が高くなっていき、現在の日本では「超々臨界圧(USC)」が石炭火力の主流となっています。
その発電効率は世界トップレベルです。
非効率石炭火力発電をどうする?フェードアウトへ向けた取り組み
2020-11-06 資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/hikouritu_sekitankaryoku.html
非効率な石炭火力発電のフェードアウトの具体的な数値
日本においては、「非効率な石炭火力発電のフェードアウト」
について具体的な方針が示されています。
石炭火力については、2021年4月の石炭火力検討ワーキンググループの中間とりまとめにて、
石炭火力発電の発電効率目標43%となっています。
この効率は、超々臨界圧(USC)の最高水準です。
ここから、亜臨界圧(SUB-C)、超臨界圧(SC)の石炭火力発電はフェードアウトの対象ということになります。
石炭火力検討ワーキンググループ 中間取りまとめ概要
2021年4月23日 資源エネルギー庁
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/sekitan_karyoku_wg/pdf/20210423_1.pdf
日本の石炭火力発電
日本では、大手電力の発電所を中心に最新技術による高効率石炭火力発電(「超々臨界圧」以上)への置き換えが進んでいますが、
現在も稼働する石炭火力発電所のうちの約5割は非効率(「超臨界圧」以下)な発電方式です。
石炭火力検討ワーキンググループ 中間取りまとめ概要
2021年4月23日 資源エネルギー庁
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/sekitan_karyoku_wg/pdf/20210423_1.pdf
電力会社の動向
大手電力会社10社の動向を確認してみましょう。
参考ですが、日本の石炭火力発電設備の一覧はこちらにまとまっています。
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/026_s01_00.pdf
北海道電力
火力電源としては、経年化した石油・石炭火力を廃止し、LNGを活用する計画です。
ほくでんグループ経営ビジョン2030 2020年4月30日
https://wwwc.hepco.co.jp/hepcowwwsite/corporate/ir/management/pdf/management_vision_2030.pdf
東北電力
環境性や経済効率性の低い経年⽕⼒発電所の休廃⽌を着実に推進する計画です。
東北電力グループ中長期ビジョン 2021年
https://www.tohoku-epco.co.jp/comp/keiei/vision/01vision.pdf
東京電力
株式会社JERAを通じて火力発電の高効率化等を進める計画です。
TEPCO 統合報告書 2020-2021 2021年8月
https://www.tepco.co.jp/about/ir/library/annual_report/pdf/202108tougou-j.pdf
北陸電力
バイオマス混焼増加により、⽯炭消費量=10%削減/年 の計画です。
北陸電⼒グループ2030⻑期ビジョン 2019年4⽉
https://www.rikuden.co.jp/hoshin/attach/2030chouki-shosai.pdf
中部電力
脱炭素燃料(カーボンニュートラルLNG、水素・アンモニア)による火力発電等への変換する計画です。
中部電力グループ 経営ビジョン2.0 2021年11月24日
https://www.chuden.co.jp/publicity/press/__icsFiles/afieldfile/2022/02/18/211124b.pdf
関西電力
火力発電は、水素・アンモニア発電、「カーボンリサイクル技術拠点」におけるCCUS等の技術検討・協力する計画です。
関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)
https://www.kepco.co.jp/corporate/policy/pdf/plan_2021.pdf
四国電力
非効率石炭火力のフェードアウトへの対応をする計画です。
よんでんグループ中期経営計画2025 2021年3月
https://www.yonden.co.jp/assets/pdf/corporate/ir/policy/medium-term_management_plan/medium-term_management_plan_2025.pdf
中国電力
三隅発電所2号機は、超々臨界圧(USC)の採用に加え、バイオマスの混焼により、環境性、経済性に優れた石炭火力発電設備を建設しています。
ENERGIACHANGE 2030 2020年1月
https://www.energia.co.jp/ir/irkeiei/pdf/groupvision_02.pdf
大崎クールジェンについては、次の記事で詳細説明をします。
九州電力
石炭・LNG火力の高効率化を図る計画です。
九電グループ経営ビジョン2030 2019年6月
https://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0334/8154/qz95fxvr.pdf
沖縄電力
石炭火力への県産バイオマス混焼拡大、LNG利用拡大等の「着実な取り組み」を推進する計画です。
おきでんグループ 中期経営計画 2025 2022年3月
https://www.okiden.co.jp/shared/pdf/ir/management/plan_2025.pdf
まとめ
最後に、本記事のまとめです。
- 日本の2030年度電源構成として、石炭火力発電の比率は19%を目指す(現状の32%から▽13%低減)
- 非効率石炭火力発電はフェードアウトを行う計画であり、石炭火力発電の発電効率目標43%、亜臨界圧(SUB-C)、超臨界圧(SC)はフェードアウトの対象
- 現在も稼働する石炭火力発電所のうちの約5割は非効率(超臨界圧(SC)以下)な発電方式
- 各電力会社は石炭火力発電の高効率化、LNGや水素・アンモニアへの燃料転換といった記載が多い
Part2で、IGCCやIGFC(大崎クールジェン)について、解説します!
ご覧いただき、ありがとうございました。
以上、ニュー太郎でした。
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